日本橋の麒麟像の前で息絶えた男性。その青柳は別の場所で刺されたにも関わらず、8分もかけてそこへたどり着いていた。管轄の加賀はその謎を追う。が、容疑者の八島は事故で意識不明、更には青柳が労災隠しの報復で殺された旨の報道で世間の目が逆転し……
監督:土井裕泰 出演:阿部寛
長年、東野圭吾ファンをやっているせいで、
そのドラマ化・映画化されたものには超辛口な私。。。

文章が乾いていて冷静なところが好きなので、
妙に感傷的に作られるとそれだけでイヤになってしまうのだ。
今回は原作未読だったので、その方がいいかもなぁと、
そのまま観てみた。
いやあ……
素直に「よかったな」と思えた

事前に原作を知らない方が、
映画にしろドラマにしろ、いいんだな、きっと。
原作に近いのかどうかわからなかったけど、
ズシン、ときましたね。
最近は軽めの明るくて楽しいものばかり観てたから、
こういう重厚なものがより響いてきた。
東野作品は好きだけど、だいたい重くて暗い。
読みやすい文章ととっつきやすいエピソードの積み重ねのせいで、
若い頃はそれに気付かずにいたくらい(<鈍っ
)。だけどその分読み応えがあるし先が気になるしで、東野中毒になった。
この「麒麟の翼」の映画はそんなテイストばりばりだったので、
かなり満足してしまった

以下、ネタバレします。
まだの人は観てから読んでね。
……やっぱり重い。
子供を導く大人が、肝心なとこで間違いを教えると、
悲劇が増え続けていく……。
あれって、イジメとは違うと思うのね。
体育会系ではよくあること、取り分け男子なら。
悪気はなかった。
ただ行き過ぎて深刻なことになってしまった。
その最初の過ちの時に、責任の重さや向き合い方を、
ちゃんと導いてやれていたら。
生涯その後遺症を引きずることになってしまった子供、家族はもちろんだけれど、
それを引き起こした彼らもまた悲痛だ。
曲がっているわけでも残忍なわけでもない、
どこにでもいそうな普通の子供なのに、
こんな風にどんどん深みにはまるしかなかったことが、
今時あまりにもありそうで、胸が詰まった。
あの教師のしたことは、被害者家族が責められる原因となった「労災隠し」と同じ。
言われるまで間違いに気付かなかったってこと自体が、
まず罪じゃないのかな。
劇団ひとりだった時点で怪し過ぎたけど。
息子と向き合えなかった父も、事態を悪化させたわけだけど、
彼の方はそれをわかっていて何とかしようとしていた。
最後にその気持ちが伝わったことが、救いだったな。
悠人くん等は、「こんなことをしても許されるわけじゃない」と言いながら、
せずにはいられなくなった。
そうやって「忘れないでいる」ということが、
償いのまず第一歩なのじゃないだろうか。。。
犯人探しのミステリーとしても、観応えあったし、
日本橋界隈のプチ観光として観るのもよし

それにしても、
「麒麟の翼」像ひとつからよくあそこまで話が膨らませられるもんだ、と感心する。
ただ、テレビシリーズの加賀刑事を期待すると、ちょっと違うかも知れない。
加賀さんて、元々東野作品の本格推理系の刑事として何度も事件解決してるんだが、
私の中では無色透明な感じで、鋭い明察や推理ぶりの割には印象に残っていなかった。
なので、テレビドラマ化で阿部ちゃんと聞いて、
しかもあれほどアクが強いキャラになってたのには違和感があった。
でもこの映画では、そういう色はあまり強調されることなく、
真実に迫る洞察力や、彼の、人としてあるべき道をわかっている
芯の強さみたいなものが前面に出る感じで、
私の持ってたイメージに近くなってた。
悠人君達が最初に間違ったときに、側にいたのが加賀さんだったらよかったのにね。
「君ならどうすればいいかわかるよね」と説いた、優しい言い方がグッときた。
加賀さんの、
「公式はちゃんと使えば正解を導けるが、間違って覚えると何度も同じミスをする」
という言葉が鋭く、この話を要約していた。
ところで向井くん、、、
動きもしゃべりもしないあれだけの出演で、
デカデカとエンディングに名前って……あり?
写真だけならNHKみたいにそう括弧書きして欲しいわ

それから溝端くんが頑張ってた。
駅線路での大活躍は、なかなかに見せ場だったね

綺麗な顔してるけど、田舎の野性児だったと話してたことがあったから、
意外とこういうアクション、合ってるのかも。
観た後、たまらなく東野小説が読みたくなった。
この原作を読むのは先になりそうだから
(文庫にならないと買わないし、図書館じゃ1年は待つだろうし……
)、てことで、本棚から何か引っ張り出そうっと。
