筋書きのないドラマ、筋書きのあるドラマ-映画編-

同名の、野球&映画ブログから、映画だけ独立させてみました。

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シンプルで雄弁 「アーティスト」

1927年、サイレント映画のスター、ジョージと、駆け出し女優ペピーは出会う。その後ペピーはスターへの階段を駆け上がり、トーキー映画への移ろいと共にジョージは落ちぶれてゆく……。アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞、衣装デザイン賞、作曲賞の5部門受賞
監督:ミシェル・アザナヴィシウス 出演:ジャン・デュジャルダン



正直に言っちゃうと、
実はアカデミー賞受賞作品というのがどうも苦手だった

人種差別や宗教問題などの社会的なテーマが多く、たぶんそのリアリティを突き詰めた分、
縁遠く実感が沸かず、難解でついていけない、というパターンが多かったのである。
実際、何度観ても眠ってしまった前科がある作品もある

というわけで、今年のアカデミー賞で
ブラピの「マネーボール」やジョージ・クルーニーの「ファミリー・ツリー」、
トム・ハンクスの「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」などの強敵を押しのけて
5部門も受賞したこの「アーティスト」も、あまり乗り気ではなかった。

映画が好きとか言いながら、「トーキー」=声のある映画(talkのことだったのね、なるほど)
ということすら知らなかった私なので、それ風の、しかも白黒の映画なんて、
それこそあまりに今と縁遠くかけ離れた古くさい感じがして、
絶対共感などできないと先入観があったのである。
で、グズグズしてるうちにこんなに出遅れてしまった……

前置きが長くなったが、
観たらそんなん、全部吹き飛んだ
よかった。
すっごくよかった

音楽がいい。
俳優さんの表情がいい。
声がなくても、ところどころに入る字幕の補足だけで、
すべてがわかる。

最近のドラマにしろ映画にしろ、
ナレーションや独白が多く、セリフにしてもやたらに説明してくれすぎるのが
非常に鬱陶しかっただけに、
シンプルで小気味いい。
そう。
これだけ最低限のことで伝わるものなのだ。
このそぎ落とし感が好き

そして、1927年の時代物でありながら、
扱っているテーマは普遍的。

「トーキー映画」に取って代わられ、衰退する「サイレント映画」。
時代に乗り遅れたスターは転落していく。
でも、再生していく。
それは、彼を思ってくれる人がいたから。

時代が変わっていくことでなくなっていくものがあり、
居場所がなくなり、苦悩の末に再出発、という、
現代でも10年前でもいつの時代にも、
どこにでも見られる話なのだ。

そして、私はそういう復活物語が大好き

それも、一言もセリフを発さないのにすごくわかりやすくて
(最後までどの俳優さんもどんな声かわからなかった。。。)、
胸に迫る。

誰もが認める大スターで、ちょっと鼻にかけてイヤなところもあったジョージ。
(この人、「風と共に去りぬ」のクラーク・ゲーブルに見えて仕方なかった)
でも、運悪く「サイレント」から「トーキー」への移行の時期にぶつかってしまう。
これは彼のせいではない。
それで落ちぶれていくのだけれど、
彼の一言をきっかけにスター街道を駆け上がっていったペピーは
ずっと彼を尊敬し感謝し、愛し続けた
ジョージの運転手さんのクリフトンも、「クビ」と言われたのにずっと車の横にたたずんでいた
愛犬のアギーも、ジョージのピンチには全速力で助けを呼びに行った

ああ、この二人と一匹の、ジョージへの思いの深さに、
何度もうるうる来てしまった

本当に苦しいときに、数は少なくてもこういう人達さえ側にいてくれれば、
きっと乗り越えられる。
……という大切な人が、自分にはどれだけいるだろうか、、、と
考えてしまったり。

外国映画のラブストーリーにしては、
余計な色物シーンを全て排除して、
「思い」だけに焦点を当てているのも好印象。

最後の二人のシーンがまた、本当によかった。
そういえば、二度目の出会いの時に、間仕切り越しに
足だけで会話してたものね
あのシーンは面白かった。
それがラストにつながる。
そういう細かいところから全てが、
粋でシンプルで切なくて優しくて楽しかった

昔の、本当のサイレント映画をよくご存じの方はまた違った感慨もあるのだろうと思うが、
全く知らない私のような人間が観ても、困ることは何もない。
観逃さなくてよかったと思う。

白黒だし、無声だし、古くさそうだし~。
そんな気がして敬遠しているあなた。
すぐに映画館へ行くことをお勧めします

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